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シナリオ資料に描写表現を書き込む理由を再認識しよう

シナリオ中の描写には種類があります。

以前難易度論を書き進めていた頃に考察したのですが、描写はプレイヤーに対する行動誘導をその第一の目的とします。それゆえ、行動を誘導しようとしていない描写は原則的には不必要な描写です。このゲーム進行上必要な行動誘導のための描写を進行描写と呼びましょう。

しかし原則にはいつも例外がついて回ります。演出上必要な描写というものも存在するからです。プレイヤーに価値判断を要求したり、進退の判断を迫らせたり、そうでなくとも単にシナリオの雰囲気に巻き込むための描写というのも考えられます。こうした演出目的の描写を演出描写と呼びましょう。

 

今日はこの二つの表現を意識しながら、シナリオ資料に描写表現を書き込むことの本来の目的を強調しようと思います。

結論として見えてくるのは、プレイヤーのために描写があるという、非常に基本的な目的意識です。

 

メニュー

1.進行描写の例と用法

2.演出描写の例と用法

3.目的を見失うべからず

4.融合した演出的進行へ

 

1.進行描写の例と用法

セッションは進行描写を軸にして進みます。当然、シナリオ資料にも進行描写を多数書き込んでおく必要があります。

進行描写の例

部屋の中には古い木製の机と、本棚があります。どちらとも埃をかぶっていますが、机の上には手紙のようなものが放置されていますね。本棚の方は、何か探している書籍があれば、内容を宣言してくれれば有無を伝えます。

この例では、探索者を机の上の手紙に誘導しています。また、本棚に対して可能な行動内容をあらかじめ指示することで、「必要になりそうな書籍の内容を特定する」という探索課題の存在を伝えています。

 

このように、プレイヤーたちの行動を制御する目的で読み上げられる描写を進行描写と呼んでいます。

 

2.演出描写の例と用法

一方、そのような目的を持たない描写も時として重要です。

演出描写の例

懐中電灯の明かりが、暗闇に沈んだ地下道に投げ込まれた。数十年ぶりに光を見たネズミが驚いて走り去る姿が目に止まる。危惧したことなど何もない。老人のシミのように乱雑に走り回る苔から不衛生に湿った匂いが漂う壁を、白々しい光が撫でていく…

この描写の目的は、地下道に侵入した際の緊張感と小さな怯え(あるいは不安)をプレイヤーたちと共有することです。特にこの情報を聞いたからといって、プレイヤーが次に取る行動が何かに定まるわけではありません(せいぜい「進んでもよさそうだ」というくらいの判断材料にしかなりません)。

 

このように、シナリオ内の雰囲気の共有を目的とする描写を、ここでは演出描写と呼びます。

 

3.目的を見失うべからず

二つの分類を提案しましたが、その理由は二つを柔軟に使いこなせという話ではありません。ここで強調したいのは、「すべての描写には目的がある」ということです。

 

いわゆる吟遊キーパーとか吟遊シナリオという誹りがあります。すなわちプレイヤーのリアクションそっちのけで、キーパーがやりたい演出に没頭し、NPCだけで芝居を始めてしまうキーパーのことです。

誰だってこの状態に陥る危険性があることは忘れてはなりません。もしもPLたちの反応が常に停滞気味だったら? シナリオの指示で長い独演会が必要になったら? さまざまな場面で描写はセッションにとって毒に転じます。

 

この事態を避けるためには、描写の目的を忘れないことが重要です。

別に演出描写を入れるなと言いたいのではありません。しかしその目的は「プレイヤーとシナリオの雰囲気を共有すること」にあるのであって、「物語を上演すること」にはないのです。

 

 

4.融合した演出的進行へ

したがって、目的さえ失わなければ、描写はいくらでも変更可能です。

演出的進行描写

扉を開くとまるで独房のような殺風景な部屋だった。頭よりも上に作られた小さな小窓から、わずかばりの月明かりが差し込んでいて、まるで遺書でも書かせるみたいに寂しげな机が中央に置かれている。おあつらえ向きにB5サイズのひどく傷んだ紙が机の上に放られていて、かつてここに座っていた誰かが書き残した、妙な癖のある文字がその表面に走っている。紙を手にとって扉を振り返ってみれば、腰くらいの高さの本棚に色あせた背表紙が並んでいた。とても全ては読む気になれないが、この部屋の目的がわかれば、めぼしい本も見つかるかもしれない。

先ほどの進行描写に演出を加えて書き込みました。結果としてプレイヤーは手紙を読む必要があるということ、そして本棚を調べるためにもう少し調査が必要なことがわかるでしょう。

しかし、これを読んで幾らかの方が感じることがあるはずです。

 

長い。読むのが面倒。重要な情報がなんだかわからない。

 

この感想、全く妥当です。私ならこんな面倒な描写を一部屋一部屋に用意することは決してしません。なぜしないのでしょうか?

理由は非常にシンプルです。目的を見失っているからです。

 

みなさんTRPGのセッションをしに集まったのですから、ゲームキーパーの最大の優先事項は「プレイヤーにたくさんのトス(プレイ機会)を投げること」にあります。当然、シナリオライターもこれを意識しなければなりません。シナリオのテイスト(味付け)にもよりますが、緩急をつけた描写を心がけましょう。

書き込むべきところに書き込み、不必要なところは書かない。この意識を持つだけで、シナリオライティングはぐっと楽になるはずです。