TRPGをやりたい!

電源・非電源ゲーム全般の紹介・考察ブログ

協力型システムに「対立」を持ち込むべからず?

TRPGにはたくさんの種類のシステムがあり、様々な遊び方があります。幾つかのシステムでは明らかにプレイヤー同士の対立が志向されていますが、一般にTRPGは協力型のゲームです。

 

というのも、はじめプレイヤー同士が対戦していたウォーゲームの亜種として、プレイヤーが協力して事に当たるTRPGが開発された経緯を持つからです。TRPG黎明期において、プレイヤーが協力するならTRPGをプレイし、プレイヤーが対立するならウォーゲームをプレイすればよかったのです。

しかし、TRPGもずいぶんと独自発展を続け、再びTRPGにおいてプレイヤー間の対立を含めて楽しみたいという需要も登場し、それを満たすシステムも開発されています。特にテーブルゲーム「人狼」の流行はこうした需要を後押しし、他のプレイヤーを出し抜いて自分の目的を達成することを楽しみたいプレイヤーもかなりの数に上るようです。

 

今日はこの「協力」と「対立」という二つの楽しみ方のうち、「協力」を前提としたシステムについてお話ししようかと思います。

強調したいのは、協力型システムに「対立」の要素を持ち込むことには注意が必要だということです。

 

メニュー

1.協力しあう素敵なパーティ

2.パーティ内対立がもたらすもの

3.大切なのは「棲み分け」

 

1.協力し合う素敵なパーティ

TRPGは協力し合うゲームとして誕生しました。それゆえ多くのシステムではプレイヤーたちの協力は最も基本的な前提の一つと考えられています。

たとえばクトゥルフ神話TRPGの基本ルールでは、プレイヤー間が対立して闘争状態に陥ることは考えられていません。これは公式シナリオにそのようなプレイングを前提としたものが存在しないことからも明らかです。探索者たちは全体で一つの利益を追求しなければならないのです。

 

こうしたプレイングについて、私が参加しているソード・ワールド2.0キャンペーンにおいて、嬉しい展開がありました。

私が扱っているキャラクターは脳筋鉄壁リルドラケンで、常に相手を叩きのめすことしか考えない主戦派です。そのときも例によって難敵に挑みかかり、パーティは大苦戦を強いられてしまいました。後衛にまで遠隔攻撃が到達し始め、事態の打開が困難だと感じたとき、仲間を生かして逃がす方法をとっさに考えました。

見出した唯一安全に逃走する方法は、次のものでした。自分のキャラクターが役割に殉じて騎兵盾として立ちはだかり、その間に仲間全員が逃走すること。自分のキャラクターの命と引き換えに仲間全員を救える最良の安定策です。

私はとっさに「俺が抑えている間に撤退しろ」とだけロールプレイをし、仲間の一部もこれに同意しました。しかしそのとき、後衛の魔法剣士を担っていたプレイヤーが結果を予測したのか、次のように反応します。「いや、いま退けば◯◯(私のキャラ)が助からない。一人で格好つけるんじゃない!」そしてほかの冒険者も次々に攻撃に転じます。

 

「死ぬ(ロストする)ときは、パーティ一緒じゃないとね!」

 

残りHPが2や3のメンバーもいる極限状態で、パーティがこれ以上ない団結を見せました。結果として、そこからダイス目が大反転。私たちは辛くも苦戦を押し返し、一人の犠牲者も出さずに逆転勝利を掴みとりました。クリティカルヒットにクリティカル回避…その一つ一つが劇的に見えたものです。

 

プレイしていて、これこそ協力するTRPGの醍醐味だと感じました。協力を前提としたTRPGにおけるパーティのひとつの理想形がそこにあったとさえ思います。あの協力は、ただパーティが形式的に協力したのではありません。パーティの全員が自分一人の利益(生存)を無視して、パーティメンバーの利益のために行動した結果だったのです。

 

協力型のTRPGはこれほどの連帯を前提としており、団結と協力の中で生まれるロールプレイをこそ楽しむものなのです。

 

 

2.パーティ内対立がもたらすもの

そんなプレイングを前提としているシステムにPvP要素を持ち込むと、幾つかの不都合が発生します。

 

(1)GMがセッション全体でPvPを前提とする場合

GMがPvP要素を宣言してプレイする場合でも、やや困難が生じる場合があります。

それはシステム負荷です。システム負荷というのは、本来プレイヤーが対立することをシステム上想定していないために発生する様々な軋みを意味します。

クトゥルフ神話TRPGで〈説得〉や〈言いくるめ〉技能によって強制的に意思決定を誘導されるとき、NPC相手なら問題は発生しませんが、プレイヤーキャラクター相手だと難が生じます。また〈心理学〉によってプレイヤーキャラクターの心理を読むよう試みるときの処理はシステムがフォローしておらず、GMが独自に解釈する必要があります。その独自ルールを共有した身内では可能ですが、広く一般的に使えるルールとしては整備されていないというべきでしょう。

 

(2)PLが勝手に自分一人の価値を優先する場合

それ以上に問題が発生するのは、プレイヤーが自分のプレイヤーキャラクターの価値を優先して、協力関係を乱す場合です。

他のプレイヤーが協力関係を前提としている状態で自分の利益を最大化しようとすれば、たとえば次のようなプレイが起こり得ます。

魔法使いとしてパーティに同行し、前衛が負傷しながら敵を排除し終えたところで、後衛から魔法攻撃を味方に対して実行。仲間を全員殺して報酬を独り占めする。

この行動はシステム的には禁止されていません(もちろん禁止だと明言しているルールもある)。しかしこんなことをすれば、おそらく2度とそのメンバーで一緒にプレイすることはできないでしょう。

ずいぶんと極端な例を出してしまいましたが、次の場合どうでしょうか?

回収を依頼されているなんらかのアーティファクトを、探索技能に成功した一人のプレイヤーキャラクターが発見。その性能はこのキャラクターにとって目がくらむほどのもので、とても差し出したくはなかった。しかしパーティ全体の目的としてはこれを破壊することが最優先だ。

結局、このプレイヤーはアーティファクトを隠し持ったまま、依頼には失敗したものとして振る舞い、たった一人でその戦利品を独占することにした。

ちょっとだけ起こりそうな事態になってきました。しかし、これも他のプレイヤーの満足感を邪魔してしまっている点ではなんら変わりはありません。

 

さらにプレイヤーが独自に対立要素を持ち込むと、シナリオの趣旨以外の部分に過剰にエネルギーを投資する必要が生じます。勝手に導入された不信合戦は、セッション全体にとってのノイズ以外の何物でもありません。それは目標の達成を困難にし、ゲームの進行を阻害し、プレイヤーの楽しみを奪います。

どうしてもキャラクターの個性を表現したいと言う場合には、その旨断ったうえで、他のメンバーによってたしなめられるところまで演出するように配慮しましょう。プレイヤー間の諍いを楽しみたければ、それをやると宣言しているセッションか、それが前提されたシステムで遊べばいいだけのことなのですから。嘘を見破れない他のプレイヤーが間抜けなのではなく、将棋盤に碁石を打った嘘つきのプレイヤー自身が最大の大間抜けなのです。

 

 

3.大切なのは「棲み分け」

なにも対立の楽しみを禁止しようと言っているのではありません。大切なのは棲み分けを行うことです。「いつもの卓は協力型だけど、今日はたまには対立型でやります」と宣言して、「対立時のルールの曖昧なところはこうやって処理します」を明示しましょう。そしてそれが宣言されていない限り、勝手に対立要素を持ち込まないように注意しましょう。

 

TRPGにおいて最も大切なのは、セッションがハッピーに終わるということです。つまり、セッションに参加している人全員が楽しめるようセッションを演出する義務が、GMにはもちろんPLにもあるのです。

ただ一人がほくそ笑んで楽しむのではなく、一人一人が楽しみ、総合して全員が楽しめるように、ルールと前提を共有してセッションするように心がけましょう。