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電源・非電源ゲーム全般の紹介・考察ブログ

クローズドシナリオにおける自由探索と物語

難易度について考察する連載記事を執筆するのと並行して、一つのクローズドシナリオを設計していました。

前回執筆したクローズドシナリオ「糸に囚われて」のときには、ある点を棚上げにすることで、完成度が低いなりに一つのシナリオを完成させました。しかし現在、前回あえて無視していた点に正面から取り組み、新しいクローズドシナリオを設計しています。

その問題とは「情報取得順序を制御できない」というものです。クローズドシナリオはイベントによって事態が展開するのではなく、固定配置された情報をプレイヤーが好きな順番で取得していくことになります。これによって、クローズドシナリオでは物語展開を作りにくく、小さな謎解きがシナリオの中心に据えられてしまいがちでした。

 

どういう順番で情報を取得するのかわからない中で、どうやって物語を作り出すのか。この問題を解決するためのクローズドシナリオの設計方法として、今回は4つの方法を思いついたので、それぞれを提案しておきます。今後の記事でそれぞれの方法に基づいたシナリオ設計ノウハウを整理しようと思います。

 

メニュー

1.配置型情報と順不同探索

2.時間経過式イベント

3.謎解きという解決

4.キー形式による取得順形成

5.フレキシブルシナリオ

 

1.配置型情報と順不同探索

クローズドシナリオの最も極端なパターンは、一部屋だけで進行するシナリオです。

ウェブ上でもアプリでも、たくさんの脱出ゲームがフリーでもプレイできますが、あの形式に最も近いシナリオということになるでしょう。探索者は部屋の間取り図中に配置された情報源に総当たり的にアクセスして、それらの情報が示す解決手段を実行するに至ります。

 

このとき、探索者がどの順で情報を得ていくのかは定まりません。

たとえば、机の引き出しに日記が隠されていて、ベッドの下に魔法の品が隠されていたとしましょう。あるプレイヤーは先に机の引き出しを調べるでしょうし、別のプレイヤーはベッドの下から調べることでしょう。

この場合、置かれている情報の質が全く違うため、前後してもあまり影響はありません。しかし、二つの日記の断片があって、一方が事件の核心に近く、もう一方は遠いものだとしたらどうでしょうか? その場合、事件の核心を知った後に、真相から離れた演出上の情報を獲得してしまうことが起こり得ます。

 

 

2.時間経過式イベント

私が前回のクローズドシナリオ構築において利用したのは、時間経過式イベントという最も簡単な解決手段です。時間経過とともに次々にイベントが発生し、それぞれのイベントの持つ含意を読み解きながら、タイムリミットまでに脱出を目指す形式をとりました。

この形式の強みは、ゲームマスターが物語の主導権を握り続けることができる点にあります。次に発生するイベントを選び、実際に発生させるのはゲームマスターです。ゲームマスターは頃合いを見て起承転結に該当するイベントを発生させます。キーパーがイベントを通じてすべての必要情報へと導いてくれるため、プレイヤーの負担はかなり小さくなります。

その分だけ、物語に主体的に関わっているという感覚は薄くなるかもしれませんが、そのあたりはゲームキーパーの腕次第といったところでしょう。

 

この方法に基づいたシナリオ形成については、今度一記事を割いて整理してみることにしましょう。今日のところは、他の方法を検討してみます。

trpg.hatenablog.com

 

 

3.謎解きという解決

他の典型的な解決手段であり、なおかつ楽しみやすいシナリオとして、リドル(謎解き)シナリオがあります。謎解きシナリオでは、情報量を必要最低限に抑えることで、物語よりもパズルとしてシナリオを構成します。

謎解きシナリオは、いわゆる起承転結を持ちません。時間経過によってイベントが推移したりすることはなく、初めから与えられているアクセス可能な情報をプレイヤーが吟味し、プレイヤーなりの結論を試してみるプロセスとして構成されます。言って見れば、起+謎解き+結という構成をしたシナリオなのです。

この方法をとることで、情報取得順の問題はいちおう解決します。物語から「承」や「転」を取り除くことで、探索順の問題を根本から回避します。物語の盛り上がりどころであったはずの「転」にあたる情報が開幕と同時に発見されてしまうようなことが起きなくなるのですから。

 

今後、謎解きシナリオも作ってみながら、そのシナリオ構築ノウハウも構造化していくことにします。

 

trpg.hatenablog.com

 

 

4.キー形式による取得順形成

たった一つの部屋で探索をするにあたって、情報提供の順番を制御する方法として、キー形式も重要な方法です。

ゼルダの伝説シリーズのダンジョンをイメージしてください。はじめ探索できる領域のどこかに鍵(キー)が隠されていて、次の探索領域を開き、そこで次の鍵が見つかり、次の探索領域を開く…。このように、閉鎖的な空間に順序をつけるために、しばしばキーが利用されてきました。

情報Aの後に情報Bにアクセスするように条件づけるためには、情報Aとともにキーを設置します。それは実際の鍵である必要はありません。たとえばハンマーだったり、長い棒だったり、何かのリモコンだったり、暗証番号だったり…様々な形でキーを設置することができます。

ただし、キー形式による制御には限界があります。多くのTRPGにはキャラクター固有の技能があるからです。たとえ鍵を設置していたとしても、〈鍵開け〉を試みられて解錠されてしまえば、やはり情報取得順は前後してしまうのです。

それゆえ、いかなる技能を持っていても突破不可能な鍵穴だけがTRPGで利用出来るキーになります。圧倒的な力を持つモンスターや、他のいかなる方法でも見抜けない隠し扉など、TRPGシステムに応じて具体的に工夫する必要があります。

 

キー形式についても、追って扱い方の原則を整理していくことにしましょう。

 

trpg.hatenablog.com

 

 

5.フレキシブルシナリオ

柔軟で融通の利くシナリオを利用する方法もあります。探索者がどういう順番で情報設置場所にアクセスしようと、与える情報の順番が定まっていて、設定場所の方が定まっていないというスタイルです。

冒頭の例を利用すると、次のようになります。先にベッド下を調べた探索者は、ベッド下で事件の核心から遠い演出上のメモを発見します。しかし、先に机の引き出しを調べた探索者は引き出しに同じメモを見出し、ベッド下には事件の核心に近い情報を発見します。情報設置場所と情報伝達手段が密接に関わっていなければ、このように柔軟に前後を入れ替えることが可能です。

マスタリング難易度は増してしまいますが、初めからこの形式を指向してシナリオ資料が設計されていれば、そう難しくもありません。クローズドサークルの状況次第では、実は最も設計しやすいシナリオかもしれません。この方法も、追って整理してみることにしましょう。

 

trpg.hatenablog.com

 

 

 

さしあたっては、以上の4種類の方法を提案することができます。

今後の記事でそれぞれに基づいたシナリオ設計のノウハウおよびそれらを複合したシナリオ設計のアイディアについて整理していくことにします。