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シナリオを翻訳していただいて感じたJ-TRPGの可能性

先日、私の執筆したソード・ワールド2.0用のシナリオ、「冒険者の腕試し」が、有志の方(Adelineさんtwitter : @eydlin7)によって中国語に翻訳されました。こちらのサイトで公開されています。

www.goddessfantasy.net

翻訳していただいたAdelineさんは、ほとんど日本人のように日本語も流暢にお書きになられているので、中国のTRPG事情や翻訳の依頼など、種々のご興味をお持ちの方は、交流なさってみてはいかがでしょうか?

 

さて、プレイしていただくだけでも光栄なところを、まさかのシナリオ資料の全訳です。はじめ耳にした時には、驚いて動きが止まってしまいました。すでに中国語圏でも、数十件のダウンロードをいただいているようで、私のシナリオが遊ばれ始めているようです。

 

今日は、この翻訳されたシナリオの紹介と、シナリオの翻訳をいただいたという一件を通じて感じた雑感を述べていこうかと思います。

 

メニュー

1.ショートシナリオ:冒険者の腕試し

2.TRPG逆輸出時代への挑戦

3.シナリオ事業は商業化できるか?

 

 

1.ショートシナリオ:冒険者の腕試し

実は、このシナリオが完成したとき、私は、あまり高い自己評価をつけませんでした。このシナリオには物語が欠けていますし、プレイヤーがキャラクターの立場や思想について理解を深めるような展開も用意されていません。

しかし、今回翻訳されたことで、あらためて資料を読み返してみました。すると、これがなかなかどうして、初心者には非常にプレイしやすく、それでいて、世界に冒険者や蛮族が息づいている感じのする、いいシナリオではありませんか。

 

初仕事を求める冒険者は、実力を認めてもらえないために、森のパトロールを依頼されます。森では、コボルドと“とある生物”が生存競争を繰り広げています。探索を行えば、その姿が少しずつ見えてきて、コボルドたちが混乱に陥っていることがわかりはじめるでしょう。そのとき、コボルドは草むらの中に引きずり込まれるように消え、ただならぬ存在の予感に冒険者たちは息を飲むことになります。そして冒険者たちが目にするのは…。

 

といった、ちょっとだけパニックホラーの要素を加えた、初心者向けSW2.0シナリオとして仕上がっています。

逆に言えば、キャラクターの内面や社会状況を考える必要性が少なく抑えられているぶん、初心者が判定操作に習熟しながら、小さな冒険を楽しむ、いい練習シナリオ担っているのではないかと感じました(その点では、もう少し探索技能を分散させた方がよかったのかもしれませんが…)。

 

日本語版のダウンロードはこちら↓

sites.google.com

 

このシナリオが選ばれた背景には、中国におけるTRPG需要の高まりがあるのだと思われます。

 

 

2.シナリオ事業の世界展開の可能性

なぜ、初心者用のシンプルなショートシナリオが翻訳されたのか。

中国の経済発展に比例して、文化活動も活発化しつつあります。裕福さを得た人々は、娯楽を求めて国内外の娯楽文化に目を向け、日本製TRPGにも少しずつ注目が集まっています。日本におけるTRPG流通初期と同じように、有志がルールブックを翻訳して、サークル内外で共有しながら、プレイを続けているような状況のようです。

 

これは日本のTRPG業界が、単純な国の総人口比で言えば10倍にも達する市場に進出する可能性があることを示唆します。table top RPGを輸入し、日本で独自発展した“TRPG”が、世界に発信される時代がすでに到来しているのです。

 

しかし、こうした流通にマイナスの効果もあるのは事実です。有志翻訳のルールブックが流通してしまったことで、商業ベースのJTRPGの普及には工夫が必要になりました。ルールブック自体は海賊版やハウスルール付きのローカル版が優先され、購入インセンティブが少なくなってしまうからです。

 

そうした状況下で、どのようにして、TRPGビジネスを成立させるのか、新しいビジネスモデルの探求が必要になります。

 

興味はあっても、さすがに商業ベースの状況には知見がありませんので、そのあたりは出版社の方々の努力に期待しつつ、以後の取材課題としておきましょう。

 

 

3.シナリオ事業は国際商業化できるか?

ところで、個人としては、TRPGシナリオの流通が、商業ベースで活発になってほしいと考えています。

日本国内では、公式のシナリオ本を除いて、同人誌ベースでの流通が行われてはいますが、出版社が大手を振ってシナリオ販売を商業ベースに載せないところをみると、まだまだその規模は小さく、また、商業としての発展可能性も小さく見積もられているのでしょう。

 

しかし、国際的な流通まで考えれば、話は変わってくるのではないでしょうか?

どうにかして、翻訳版の流通をしっかりと抑えられさえすれば、シナリオの流通プラットフォームを商業ベースで国際化することもそう難しくないかもしれません。

クラウドソーシングサービスのように、翻訳者が気軽に、有償で翻訳を担当し、その成果物をそのまま同じプラットフォームで販売するようなサービスが成立すれば、同人誌の国際的な流通は一層盛んになるかもしれません。

 

もちろん、オンラインにおける著作権の軽視は極めて重篤な問題として、TRPG業界のみならず、様々な業界を苦しめていることを忘れてはなりません。

TRPGを日本だけのものと考えずに国外との関係を初めから意識したサービスを構築することで、これからのJTRPGは一層の発展に繋がっていくのかもしれません。こうした観点からも、今後ともTRPGを楽しみながら、普及に取り組んでみようかと思わせられた一件でした。