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【ルール紹介】ソード・ワールド2.0:剣と魔法の王道ファンタジー!

『ソード・ワールド』シリーズは、剣と魔法によって彩られた、ファンタジー世界を冒険するTRPGです。

 

1.国産ファンタジーTRPGの金字塔

『ソード・ワールド』が発売されたのは、1989年のことです。日本国内において、TRPGというゲームスタイルの知名度をぐんと引き上げる、重要な役割を果たした一作と評価されています。

 

世代によっては、『ソード・ワールド』の名前だけは知っているという方もいるかもしれません。 『ソード・ワールド』は、TRPGとしては異例の売り上げを達成します。 その理由は複数ありますが、しばしば言及されるのが、安価な文庫本としてルールブックを出版したという点です。

推測にすぎませんが、たしかにこの販売戦略は、多くの新規プレイヤーを獲得するのに寄与したことでしょう。それを裏付けるように、以降の国産TRPGは、『ソード・ワールド』の販売戦略を模すことになります。

 

販売戦略に加えて、その世界観も魅力的なものでした。 『ソード・ワールド』で舞台とされたのは、剣と魔法が共存し、さらには「魔動機」と呼ばれる機械まで存在している、独自のファンタジー世界です。そこには失われた文明という歴史ロマンと、よく知られたファンタジー諸種族の織りなす冒険活劇、さらに魔法と魔動機術が彩る超現実世界が共存していました。

 

しかし、『ソード・ワールド』がここまでの流行を作り出したのは、効果的なマーケティングと、比較的流通可能性の高い世界観だけではありません。 ここではそのゲームルールとしての魅力に迫ってみましょう。

 

 

  

2.あなたは英雄!いざ冒険の旅へ!

『ソード・ワールド』の魅力の一つは、「シナリオ範囲の広さ」にあります。

世界設定の基本的な方針は、そのゲーム性を決定します。 『ソード・ワールド』の基本的な方針は、勇気ある冒険者として、遺跡を探索したり、蛮族を退治したり、獰猛な動植物を駆除したりするというものです。

 

それゆえ、ルールそのものは、明らかに戦闘とダンジョン探索を前提として設計されています

マス目によらない自由移動と乱戦エリアシステムによる混戦の再現、威力1刻みのダメージ判定表、戦闘技能をベースにしたロール形成(後述)などがこのことを裏付けています。

 

しかし、丁寧に作られた世界設定と、多様な探索用判定・探索用魔法によって、シティアドベンチャもこなせるTRPGルールとしても仕上がっています。ぬいぐるみの視界をジャックしたり、ぬいぐるみを操作したり、変装したり、歌って警戒心を解きほぐしたり、壁を透視したり、そんな無茶な情報収集戦が行えるのも『ソード・ワールド』の特徴です。

 

作って楽しもうと思えば、どういった種類のシナリオでも実現できてしまうという点にこそ、『ソード・ワールド』の魅力があるのです。

 

 

3.技能と戦闘特技によるロール形成

『ソード・ワールド』において、プレイヤーたちの『個性』を特徴づけるのは、戦闘技能と戦闘特技です

戦闘スタイルに応じたメイン技能が、近接攻撃で3種、魔法攻撃で5種用意されており、これに射撃攻撃の1種を加えると、単一の技能だけで9種のロールが形成可能です。

さらに補助技能が6種用意されており、これら15種の組み合わせ次第では、もっと多くのロールを形成することができるでしょう。

 

これに加えて採用されているのが、戦闘特技という個別化ステータスです。

近接戦闘特技だけでも、回避力を犠牲に攻撃の威力をあげる〈全力攻撃〉や、魔力を借りて攻撃力を増加させる〈魔力撃〉、味方のダメージを肩代わりする〈かばう〉など多数が用意されています。

一方、魔法系戦闘特技としても、行使対象を複数選択できる〈魔法拡大/数〉、射撃魔法の誤射をなくす〈魔法誘導〉、範囲魔法を精密に使いこなす〈魔法制御〉など、多数が用意されています。

これらによって、戦闘時の行動が特徴付けられ、同じ技能を持っていても異なるロールを担うことになります。

 

ロールが多様化されることで、パーティの構成も柔軟なものになります。 必ずしも全てのロールが揃っていない状況で、自分たちの最善の行動を追求するという、ゲーム性の高いプレイングが実現する背景ともなっているのです。

 

 

4.プレイアビリティの高い2dシステム

『ソード・ワールド』が流行した要因として、2dシステムは欠かせません。

ここで「2dシステム」と呼んでいるのは、すべての判定が6面ダイス2個によって判定される、判定システムのことです。

 

TRPGでは、しばしば多様な多面ダイスが用いられ、判定別の成功確率が調整されています。しかし、『ソード・ワールド』では、それらTRPG専用ダイスの出番が一切ありません。必要なのは6面ダイスが2個だけです。

 

特に工夫が凝らされたと思われるのは、威力表を用いたダメージ算出システムです。

多くのTRPGシステムでは、ダメージ判定時のダイスの数を増やすことで、算出ダメージの期待値を増やすという方法が採用されます。しかし、『ソード・ワールド』では、高威力の攻撃も、低威力の攻撃も、2dだけで判定することがゲーム設計上の要を構成しています。

そこで採用されたのが、「威力表」です。 『ソード・ワールド』では、武器や魔法別に「威力」というステータスが用意されています。この「威力」は、「威力表」のどのテーブルを用いるのかを指定するステータスです。「威力表」には、2dの出目2〜12までに対応したダメージ値が、威力0〜100まで、一覧化されています。

「威力」が15の武器を使うなら、「威力表」の15列に書かれた、出目別のダメージを参照して、威力判定ダイス2d6の出目をダメージに変換します(例:出目が9ならダメージは5)。

〈威力表の例〉

出目 → 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

威力15 * 1 2 3 4 4 5 5  6  7  8 

このように、徹底した判定の2d化によって、TRPGダイスを持っていない、新しいプレイヤーたちにも優しい設計が実現しているのです。

 

 

5.豊かな設定資料がシナリオライティングを促進

すでに世界設定の魅力と「シナリオ範囲の広さ」については言及しました。

しかし、ユーザーたち、特にシナリオを書くゲームマスターたちが、これらの性質を活かせなければ、何の意味も持ちません。

 

『ソード・ワールド』では、ゲームマスターたちが確実に多様なシナリオを書くように、街や敵キャラクター毎に、詳細な解説が用意されています

特に敵キャラクターの生態解説は、シナリオの多様性を大いに高めています。 生態に応じて、敵が登場するシチュエーションは多様化され、しぜん、その敵に出会うまでのプロセスも多様化されます。

敵は遺跡の奥深くで待ち構えていることもあれば、街の中でひっそりと息を潜めていることもあります。戦闘時にも姑息な戦闘スタイルをとったり、水場に誘い込んだりするなど、敵は敵なりの多様なロールプレイを行うことができます。

 

こうした設定資料によって、敵は「強弱」以外にも「戦闘スタイル」によって差別化され、多様なシナリオと多様な戦術設計ゲームが実現しているのです。

 

『ソード・ワールド』シリーズのルールブックは、2015年11月現在『ソード・ワールド2.0ルールブック改訂版1・2・3』が最新版です。これに加えて、『ソード・ワールド ルールブックEX』という追加データブックも販売されています(一部のルールの改定最新版、ただしこれだけでは遊べません)。皆さんも手にとってみて、是非そのゲーム性の高さを体感してください。

 

ソード・ワールド2.0 ルールブックEX (富士見ドラゴンブック)

ソード・ワールド2.0 ルールブックEX (富士見ドラゴンブック)

  • 作者: 北沢慶,グループSNE,輪くすさが,真嶋杏次
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/富士見書房
  • 発売日: 2015/07/18
  • メディア: 文庫
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