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TRPGをやりたい!

TRPGのトビラをひらこう!

クトゥルフ神話TRPG用シナリオの執筆プロセスを公開していくぜ!【Part.4】

テクニック

前回までに、「大量の微生物が服に存在していて、それが人を魅了し、微生物は巨大なサナギへと変化して、人間のような何かを生み出す」というコンセプトを軸にした、ジャパニーズホラー的恐怖を味わえるシナリオを作る、というところまで決まりましたね。

 

この辺でようやく、「シナリオとしての筋」を作っていくことになります。

 

結局、この怪現象の正体がなんであり、どうやったら解決するのかというパッケージを作ることで、シナリオとしてクリア可能な目標に落とし込んでいきます。

 

ここでわたしが重視しているのは、「リアリティ」です。

 

特に今回は、ジャパニーズホラー的に、「恐怖が身近に潜んでいる感じ」を与えたかったので、どこまでもリアリティをもたせて、シナリオを製作したいと考えました。

 

というわけで、今日扱うのは「リアリティある解決手段を構築する」という課題です。

 

 

 

1.「なんかよくわからんけど解決する」はコメディホラーだけ

知識不足の場合にやってしまいがちなのは、「よくわからんけどこの儀式をしたら解決します」とか「よくわからんけど黒幕を殴り殺せば解決します」というような、大雑把な解決です。

こうした解決を否定するつもりはありません。それはそれで、面白いと思います。しかし、こうした結末を採用する場合には、シナリオ全体をコメディタッチに仕上げた方が、統一感があって、いいシナリオに仕上がることは間違いありません。

ほら、マーズ・アタックとか、音楽聞かせて頭爆発って、コメディだから許される結末ですよね?あれを、大統領が「インデペンデンスデイ!」とか叫んだ後にやられたら、感情移入してたこっちの気持ちを返してくれって気になります。一気にアヴァンギャルドな作品の仲間入りです。

 

つまり、オチは全体の雰囲気に反しない必要があるんです。

 

そこで、真剣に調査する探索者たちが、真剣に恐怖に向き合うシナリオを作るためには、シナリオ製作者自身が、真剣に情報収集し、真剣にリアリティに満ちた解決手段を作ってあげないといけません。

 

 

2.知識の扉が開かれる

ここで必要になるのが、知識です。

微生物について、どれくらいのことを知っているでしょうか?

 

人間の意識に干渉するメカニズムを、微生物学の用語で説明できるでしょうか?

微生物がひとかたまりになってサナギを作る現象を、どう説明すればいいのでしょうか?

ましてや、中の人間を溶かすという現象は、どう説明できるのでしょう?

そして、一度溶かしたにもかかわらず、なぜ同じ人間を再形成できるのでしょうか?

 

リアリティ路線を進んだ場合、こうした疑問にすべて答えるのが、シナリオライターの義務です。

すべての疑問に対して、「ひょっとしたらそうしたことが起こるのかもしれない」という程度の説明を与え、似非科学で粉飾していく作業が、シナリオライターに課されるわけです。

 

というところで、かつてバイオテクノロジーを取材していたわたしの経験が活き始めます。

 

マイクロバイオームの概念を使えば、この謎の微生物群が人間の神経に干渉していくプロセスの一部を説明できるかもしれない。

そしてこの微生物たちを、ホルモンの伝達を利用して思考する、情報処理ネットワークとみなせば、この細胞群は事実上巨大な露出した脳神経細胞群と同じ役割を果たすことになる。

そして微生物群が、寄生した衣服の繊維を分解して、人間に魅力的な香り物質や幻覚剤を生み出しているという程度なら、天然物化学の話を使ってなんとかなりそうだ。

溶かした人間のDNAがウイルスベースで微生物たちに受け渡されれば、人間のような何かを微生物群が再現する機構も説明できる…

 

そんな説明を、ゴリゴリとつけていきます。

 

 

3.知識不足を見つけたら、すぐに調べよ

こうして、これまでの知識を利用して、「リアリティある解決の予感」みたいなものを得ることができました。

 

結果として、今回の怪異の全容は、次のようなものになります。

 

街中に、ぼんやりと歩いている人間が、実は、微生物の集合体として作られた、「人間もどき」かもしれない。それは、街中を歩きながら、人々の着ている衣服に寄生していく。あなたがある衣服を魅力的だと思うとき、それは本当にあなたの意識がそう言っているのだろうか?それは、ホルモンを発生し、魅力的だと誤解させる、この奇妙な微生物のせいではないと言い切れるだろうか?

そうやって、私たちを魅了した微生物は、やがてあなたを深い眠りに誘うだろう。私たちは、自ら進んで、その体を新しい「人間もどき」の材料として差し出してしまうのだ。気付いたとき、あなたの部屋には、巨大な繭が一つ、転がっている。あなたはその中で、満ち足りた幸福な気持ちで、自らの体が溶ける瞬間を待ちわびている。

体が溶け始め、これまで微生物たちが取り込んできた遺伝子たちと、あなたの遺伝子が融和していく。そうして、あなたを最高の興奮が包み、紛れもない「あなた」はここで終焉する。しかし、数日後、他でもない「あなた」の姿をした人間が、街を徘徊している。次の犠牲者の衣服に、その細胞を寄生させるために…。

 

 

相手が微生物であり、衣服に寄生しているということがわかれば、体表面に紫外線照射したり、高濃度食塩水で滅菌して、汚染された服を焼き払えばなんとかなりそうです。

 

あとは、このシンプルな解決手段を発見するまでのプロセスを、シナリオとして作らなければなりません。

 

ここからが、シナリオ作りの技術的な問題です。

 

次回は、「物語をゲームシナリオとして体感させるということ」というテーマで書いてみようと思います。