読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

TRPGをやりたい!

TRPGのトビラをひらこう!

クトゥルフ神話TRPG用シナリオの執筆プロセスを公開していくぜ!【Part.2】

前回、「虫+サナギ」というコンセプトが決まりましたね。

わたしの頭の中で、これまでに学んできた様々な知識との参照が開始されました。

 

そこで問題になるのが、「アイディアの交通整理」です。

今日は、どのアイディアを生かし、どのアイディアを殺し、どれをどう結びつけて、シナリオに変えていくのかというプロセスを追ってみましょう。

 

 

1.アイディアを篩(ふるい)にかける

実は、このシナリオを作成することを宣言した後、わたしは1度、このアイディアを「ボツ」にしています。

 

この「ボツ」にするというのは、しかし、「完全に諦める」ことを意味しません。あくまで、「今のアイディアでは、書いても面白くならない」という判断を下すだけです。

 

執筆のモチベーションを、自分の興味と好奇心にリードさせているので、「面白くない」と少しでも感じたら、決して書き始めません。仕事でやっているのでない限り、これは完全に時間の無駄で、絶対に書き終わりません。

 

その代わり、篩の上で転がし続ける作業が必要になります。

 

「いったい、どうして僕は、虫とサナギなんて言葉に反応したんだろう?」

 

自分の直感を信じましょう。

そこにはきっと、ものすごく本質的な「面白さ」が眠っているんです。

 

2.アイディアをこねくり回す

次に始めたのが、虫とサナギについての知識の参照です。

無駄に勉強だけはやってきたわたしは、サナギを介して完全変態する生物について、以下のことを知っていました。

  • サナギの内部では、すべての体組織が溶けてなくなり、再度新しい体に組み替えられている
  • 変態の制御は遺伝子に組み込まれており、幼生の遺伝子が機能を停止して、サナギに変わると、成虫の遺伝子がスイッチングして、新しい体を組成する

これだけしか知りません。これだけの知識では、サナギの特徴を捉えきれませんね。

 

そこで、科学的知識から、人文科学的解釈へと発想を拡張しました。

言い換えれば、「科学的にどう説明されるか」ということから、「人々はサナギに何を見出すか」という問題に、頭をシフトチェンジします。

 

そこで、わたしが見出したのは、次の数点です。

  • 二つの全く違った姿を媒介するサナギは、それが開くとき何が現れるかわからないという点で、静かな恐怖の対象になりうる(バイオ6で利用されていた)
  • 体組織がすべて溶けるというサナギ内の現象は、人間が経験すると思うと、かなり怖い(安部公房に人間が液化する話があったし、エヴァのLCL化もなかなか)
  • 人間が突然昆虫のような姿に変化すると、社会的には、人間性の損失につながる(カフカの「変身」は英語タイトルはThe Metamolphosis=変態だった)

このあたりのアイディアを、物語の中核に流し込みます。

 

しかし、問題が残ります。

はじめ、「虫が這ってぞわぞわする感じ」に強い印象を抱いていたわたしにとって、巨大な人間大の虫が登場するのは、あまり気味悪く感じられませんでした。

どうにかして、「虫がぞわぞわする感じ」を「サナギ」と結びつけた上で、それを、「体組織が溶けてなくなる感じ」とか「人間性を喪失する展開」の中に埋め込んでいきたい…そこに、あわよくば、「得体の知れないサナギが開くときの恐怖感」をシナリオ内の印象的なシーンにしたい。

 

ここで、このブログでも紹介した、一冊の本が頭に浮かびました。

trpg.hatenablog.com 

この物語でも、「虫」は重要な役割を果たします。

後半のシーンで、頭から噴出すように現れた例の虫たちのイメージは、なかなか忘れられるものではありませんでした。

 

これを思い出したところで、わたしは、思考のひねりを加えることにしました。

 

サナギから、たった一つの奇妙な存在が生まれるわけではない。

私たちがサナギだと思う対象それ自体が、虫の集合体なんだ、と。

 

 

3.アイディアを制御する

かなり気持ち悪い感じのアイディアになり始めました。

 

「虫(微生物)の集合体が人間を包んで、その体を溶かして、人間性を失った何かを生み出す。」

 

ここまできたら、あとは、どうやってこのアイディアを恐怖へと変えていくか、という問題に向き合わなければなりません。

そこで重要なのが、次の記事です。

trpg.hatenablog.com

 

この記事では、構造主義的アプローチから、恐怖の構造を論じています。

つまりは、境界性が重要であり、「異常」をどこに配置するか、という問題を論じています。

 

そこで、問題は次のように設定されます。

  • 私たちの体の表面のようでもあり、外側のようでもあるモノに、サナギを仕込む
  • サナギは、限りなく人間に近いけれども、人間ではないものを生み出す
  • 私たちの生活の中でも起こりそうなリアリティに落とし込む

 

一つ目の問題。こうやって明確に問題設定すれば、何に仕込むべきなのか、はっきりわかりますよね?

 

そう、「衣服」です。

 

私たちのクローゼットにある衣服のうちの一つが、少しずつあなたを魅了して、この服を毎日着たい、寝ているときも着たい、むしろこれを着て眠らないといけないと感じさせ始め…あなたの意識が戻ると、あなたは白い繭の中に包まれて、体を溶かされ始めるんです。

 

衣服は日常的に私たちを包んでいるものであり、同時に、私たちの体の代わりに、相手に私たちの性質を伝えてくれる、コミュニケーションツールでもあります。微生物によって作られた衣服が、あなたの代わりに、他者にあなたを表現し始め、少しずつ、あなたは虫そのものに変化していく…なかなか興味深い話です。*1

 

さて、そうして、サナギの中から、何が生まれるんでしょうか?

いろいろな案を巡らせた結果、わたしがたどり着いたのは…

 

「何も生まれない」

 

という結論でした。

 

 

次回は、「恐怖の種類を選ぶ」ということをテーマにして書きます。

*1:ここでは、葬式儀礼を行うことで、社会的ステータス(死亡)に現実の状況(生存)を引きつけ、人を呪い殺すという、マリノフスキー先生の民族誌報告を念頭においていました。