離島クローズドサークルものを蘭嶼を舞台にして書く!
別ブログで報告しているのですが、最近、急に旅行に行くことになって、蘭嶼という台湾の離島について調査を進めています。
蘭嶼には、ヤミ族(これはちょっとした誤解から生まれた呼称で、本当はタオ族)という先住民族が住んでいます。
で、もちろんやりましたよ。先住民神話収集。
しかし、ヤミ族の神話はあまりたくさん残されてはいないんです。どちらかといえば、結構リアルな伝承の方が多いのかもしれません。しかし、その世界は独特で、なかなか見るべきものがあります。
1.人々が恐れるのはアニトの災い
タオ族の世界観において、霊魂とかおばけとか精霊とかそういった概念に相当するのが、“アニト”です。
アニトは結構何でもできてしまう、恐ろしい存在です。
現時点で確認している限りでは、女を孕ませることもできるし、逆に死産においやることもできるし、なにかしらの災いを引き起こすことはもちろん、幽霊船に乗って現れることだってあるみたいです。
では、アニトにまつわる具体的な恐怖話の一つでも…といきたいのですが、学術的な調査ではそんな話記録してくれません。ちくしょう!
その代わり、有名なアニト祓いのお守りを発見しました。
…打製石器です。
い、いや、これ、冗談じゃないんですよ?
蘭嶼では、台湾を日本が統治するまで、ほとんど古代同然の暮らしが続いていたために、20世紀中は道を歩けば打製石器に当たるというレベルで遺物が発見されていたらしいのです。
当然、地元農民が畑を耕せば、すぐに打製石器や土器片が発見されます。
そうした加工された石は、現在では用途がわからないため、とりあえず縁起のいいものとして家に持ち帰られ、保存されていました。そして、いつの間にか、こう言われるようになったのです。
アニト除け。
…おいおい、適当にも程があるだろ。
2.子供の産み方を山羊に教わる話
アニトの話はひとまず置いといて、こんな伝承が残ってるんですよ。
はじめ、人々は子供の産み方がわからず、膨れた腹を割いていた。しかし、あるとき、山羊が子をもうけて、生み落とすのを見て、なんだ、こうすればいいじゃないかと理解して、自然分娩を知ったのだ、と。
いやいや、んなわけないだろ、とひとツッコミを入れたところで、全力でクトゥルフと絡めていくいつものスタイルを採用しましょう。
山羊神…どうせシュブ=ニグラスですよ。
たしかに、蘭嶼にはやたらと山羊が多いんです。山羊と豚しか家畜がいないというくらい。今でも野生化した山羊(中国語では野生化した羊と言うべきでしょうけど)がやたらとうろついているらしいです。そりゃあ当然、伝承にも山羊が登場するはずです。
では山羊が多産の神様とか豊穣の神様なのか?
違うんですよ。
出産を司る役割は、イパラガラガオという、見えないけどその辺をうろうろしている精霊みたいな神格に与えられています。なお男児と女児それぞれを司る2柱の神がセットになってはじめて、イパラガラガオであり、あくまでツーマンセルです。
イパラガラガオは妊娠時の諸儀礼に際して備えられる食べ物を食べているとされ、その力は非常に限定的で、人間のお願いは割と聞いてくれる神様らしいです。
まさかのシュブ=ニグラス様出演ならず!
まさかの展開に狂信者達のSANが回復してしまいます!
まぁジョークは置いておいて、この、わりと善良なイパラガラガオの妊婦に対する神通力を邪魔するのが、アニトらしいんですよね。
3.結局問題はアニトである
つまり、生命を象徴するイパラガラガオがいて、その出産のあり方は山羊を見て知った、と。
一方では、死を象徴するアニトがいて、それを打ち払う術をヤミ(タオ)族は開発してきた、というわけです。
ですから、やっぱり問題はアニトなんです。
シナリオで山羊に言及するとしたら、むしろブラフでしょう。特に探索慣れしたプレイヤーなら、まずシュブ=ニグラスを疑っちゃうことでしょうから。
それはともかく、山の洞窟などにたくさん潜んでいて、好奇心旺盛で生まれたばかりの子供をすぐに死においやってしまうアニト。そんな神格というか、クリーチャーっていましたかね…
4.発見してしまえば造作もない
クトゥルフ神話において、「見えない」という現象は、通常、「別の次元にいる」か「高度なテクノロジーを有している」のどちらかで発生する現象です。
今回の場合、昨年セブンイレブンが出店されて初日に島民の1/3が詰めかけて品薄になってしまった蘭嶼の性質を考えると、「別の次元にいる」方がいいような気がします。
…あいつならいけるかもしれません。
これから、一気にシナリオを書き上げて、旅行に前後してプレイしてもらい、またリプレイを書いていこうかと思います。
うーん…孤島もの、うまくいきますかね?