クトゥルフ神話TRPGシナリオ「糸に囚われて」を公開しました
いいアイディアが浮かんだので、クトゥルフ神話TRPGシナリオとして書き上げました。
今回は、比較的シンプルなシナリオで、短い時間でササッと遊べるものを意識しました。
いつものサイト↓
こちらで公開しておりますので、ご笑覧ください。
さて、今回のシナリオの面白さのポイントをさっくりと解説しておきましょう。
1.さっくり遊べる館もの!
今回は、シナリオを書こうと考えた段階で、館ものを作ることに決めていました。ちょうど間取り図の書き方を勉強していた時に、館ものをやろうと決めたからです。
それから5日間ほど、アイディアを練っていたところ、二日くらい前に一つの着想に至りました。
館ものの条件は、何と言っても、「事件が館で完結している」という、クローズドサークルの演出にあります。
つまり、なんらかの理由で、建物から逃れられない状況に追いやられていなければなりません。今回のシナリオライティングでは、この理由付けに一番悩まされました。
2.逃げたら死ぬ、という定番
建物から逃げ出せない状況を演出するために、はじめに採用しようとしたのが、逃走を試みたNPCが、邪神の手で無残に殺され、逃走できない状況を物理的に伝える、というものでした。
しかし、この設定、定番のくせに、結構無理があるんです。
邪神が狩りを楽しんでいるなら、もっと建物を破壊しにかかってくるべきでしょう。あるいは、館の中の仕掛けが、外の邪神とリンクしているという場合でも、邪神はもっと全力で館そのものを破壊して、仕掛け稼働の阻止にかかるべきです。
悠長に外で出待ちしている邪神や奉仕種族を出すなら、“誰かの指示”で待機させられているというのが最も妥当な解釈かもしれません。この場合でも、そんな有無を言わせぬ強力な狩人を待機させられる力があって、そのくせ探索者たちに自由な行動を許すということの理由を作らなければなりません。
何より、閉じ込められた空間で情報収集して、問題を解決するということは、館の持ち主か館の以前の持ち主あたりが黒幕でなければ、情報を配置しにくいのです。
総じて、リアリティをもって考えれば、神話生物によるガン待ちでクローズドサークルを作るのは、シナリオを相応に複雑にして、矛盾点を解消する必要があるのです。
3.シンプルに遊べるパニックホラーを作りたい
一方、今回のコンセプトは、さっくり遊べるパニックホラーです。
いつの間にか閉じ込められて、次から次に犠牲者がでる中で、生存をかけて全力を尽くすというシナリオにしたかったんです。
というわけで、マルッとサクッと、探索者たちを閉じ込める方法を発案しました。探索者たちが、“門”を通ればいいんです。よく似ているが、別の場所、別の次元。探索者たちは、そういう空間に誤って足を踏み入れてしまうのです(事故で“門”に足を踏み入れてしまうトリックを考えるのがまた面倒ではありますが…)。
こうして、“門”を作って探索者たちを陥れた人物を探り、その人物が持っている魔法の品を元の位置に戻して、“門”を再生するというシナリオの方針が固まりました。
こうすれば、館の持ち主を含めて、全員が容疑者です。キーパーの興が乗れば、なんとPvP(プレイヤー対プレイヤー)にも応用できる設定です。
次々と人が死んでいき、ものの一夜で全滅する、容赦ないパニックホラーの構想が、こうしてまとまりました。
4.神話生物の選択
パニックを引き起こす神話生物には、レンの蜘蛛を採用しました。
これは、「館もの」という「逃げ場のない恐怖」を、「すでに蜘蛛の巣に囚われた状態」という比喩のもとに切り取るためです。巣にかかってしまった探索者やNPCは、なすすべなく、次々に蜘蛛の餌食になることでしょう。
なお、この比喩が、タイトルにも反映されています。
探索者たちが、実際に「糸」に囚われるのは、キャラクターロストする直前のことですが、このシナリオ自体が、逃げ場のない蜘蛛の巣として、探索者たちを捉えているのです。
5.超弩級鬼畜シナリオを望む初心者におすすめ
こうして構想が固まったところで、2週間ぶりくらいにクトゥルフ神話TRPGのシナリオを書いていたので、グロテスクなシーンのイメージが非常にはかどりました。
人間がまったく無益な抵抗を試みながら、時には英雄であるかのように決死の行動をとりながら、無残に死んでいくシーンを想像するのは、やはり愉悦以外の何物でもありません。
この感覚を共有できるキーパーの方には、是非とも残虐で無慈悲な死をばらまくためだけのこのシナリオをキーパリングしてみてほしいです。悲痛で、無残で、見境のない死の恐怖が満ち満ちているシナリオです。処理が追いつきそうなら、NPCをもう少し増やして、もっと激しい血祭りを演出してもいいのではないでしょうか?
…ところで、このシナリオ最大のトリックは、館ものであるにもかかわらず、館を探索しなくていい、という熟練者殺しの設定です。
重要なのは、探索者たちを陥れた人物が誰なのかを特定することなのです。探索者は反響するように立て続けに響き渡る悲鳴の中で、冷静に状況証拠を集め、被疑者を特定しなければなりません。
その意味では、探索系技能の大半が役に立ちません。本を読んでいる暇すらないため、図書館ロールすら使う場面がありません(キーパーによっては、独自に導入してもいいかもしれない)。メインは交渉系技能です。言いくるめたり、心理学で裏を読み取ったり、精神分析で平常心か否か判断したり…。全てはとっさの判断で、生死が分かたれてしまいます。
その意味では、技能を多用せずにプレイできるので、「人狼」などで口を鳴らしたTRPGプレイヤーが、クトゥルフ版人狼としてプレイできるシナリオかもしれません。その感覚でアレンジしてみてもいいと思うので、皆さんどんどんプレイ&アレンジしていってください。
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