TRPGをやりたい!

TRPGのトビラをひらこう!

リプレイをKindleマーケットで売れないのか?

表題の件について、このところほんのちょっとだけ活動をしていました。

 

このブログで連載しているクトゥルフ神話TRPGリプレイですが、そのほかにも様々なTRPGのリプレイが、テキストはもちろん、動画としても、ウェブ上で連載されています。

 

このリプレイ、読み物として面白いですし、さらに新しいプレイヤーにプレイ方法を伝授するという意味でも、重要な役割を果たします。

 

trpg.hatenablog.com

 

 

このリプレイビジネスは、商業ベースではあまり成功しているとは言いにくいのが現状でしょう。

公式のリプレイがたくさん売れたという話も聞きませんし、ライトノベルと違ってアニメ化されるような作品が登場することもありません。

 

とはいえ、TRPGの普及を願う私としては、是非とも品質の良いリプレイを、多くの人が手に取る場所で流通させたいというのも事実。

早速、そのあたりのことを、『クトゥルフ神話TRPG』を出版している、エンターブレインさんにメールで伺ってみました。

 

 

1.質問の内容

問い合わせは、本名を使って行いました。

その内容を要約すれば、概ね以下のようなものです。

エンターブレイン 担当者様

(前略)

Kindleマーケットにおいて、貴社の出版なされている、『クトゥルフ神話TRPG』をプレイした記録である、リプレイを個人出版したいと考えております。シナリオはオリジナルのものを用いるほか、ルールに対する言及を行う予定はありません。

まずは、リプレイの個人出版が可能か否かという点について、ご回答いただけると幸いです。

また、出版が可能である場合、権利関係の表記などについて、条件をお教えいただくようお願い申しあげます。(云々)

 

このような内容の問い合わせに対して、週末を挟んで、返信をいただくことができました。

 

 

2.リプレイ本は個人出版してはダメ?

結果は、非常にシンプルな定型メールでした。

 

その内容を要約すれば、『弊社出版物の内容の転載や複製、加工は、形態や営利・非営利を問わず、いかなる許諾も差し上げていない』というものです。

 

語調としては、明らかに『ノー』を突きつけられた格好になります。

 

二次創作がローコストの広告として機能するこのご時世に、まったく何をやっているんだか…一時はそう思わされてしまったのですが、この返事、よーく考えてみましょうよ。

 

特にクトゥルフ神話TRPGに見られることですが、このゲーム、日本ではタイトルが二つあります。すなわち、『クトゥルフの呼び声』と『クトゥルフ神話TRPG』です。

これは、ルールブックを二社が翻訳・出版したために発生した事態です。

クトゥルフの呼び声

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  • 作者: サンディピーターセン,リンウィリス,Sandy Petersen,Lynn Willis,中山てい子
  • 出版社/メーカー: ホビージャパン
  • 発売日: 1993/05
  • メディア: 大型本
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ここで明らかなのは、商標の問題です。

後発の角川エンターブレインさんは、『クトゥルフの呼び声』ではなく、新たに『クトゥルフ神話TRPG』という名称を用いました。

 

つまり、TRPGのタイトルは、基本的に『弊社出版物』に含まれることになりそうです。

 

それゆえ、リプレイ本を『クトゥルフ神話TRPGリプレイ』と表記して販売すれば、これは明らかな『弊社出版物の内容の転載・加工・複製』にあたります。

 

しかし、もし、それを書かなかったら、どうなるのでしょう?

 

 

3.リプレイ本には何が含まれているのか?

『会話劇小説』という隠語が登場し、その名でリプレイ本が販売されたとしたら、いったいどう言った法的根拠から、これを攻撃できるのでしょうか?

 

まず、商品の中にTRPGルールの詳細な解説が掲載されており、ルールブックの販売を著しく妨げてしまう場合、これを法的に禁止することが可能でしょう。しかし、リプレイにそうした内容を記載することは稀であり、せいぜいがプレイヤーガイドなど、アドバイスに止まります。つまり、キャラクターメイクの方法などの解説をしなければ、止める理由はありません。

 

また、もしもシナリオが公式に配布されているものだったなら、どうでしょうか?

公式シナリオを用いた場合も、明らかな『出版物の内容の転載・複製・加工』に該当します。この場合は特に『加工』と評価していいでしょう。しかし、こちらからの問い合わせにあった通り、シナリオを自作してしまえば、この点はなんら問題にはなりません。

 

さらに、公式クリーチャーなどのステータスが明示されていた場合はどうでしょうか?

これも『転載』に該当するため、先の警告で禁止された内容にあたることになるでしょう。しかし、リプレイ本で敵のステータスを全て表記することは極めて稀ですから、これもまず気にする必要はないでしょう。

 

もっと考えましょう。技能名や邪神の名前などについてはどうでしょうか?

まず、技能名については一般呼称ですから、気にする必要はないでしょう。また、『ダイスで進行を決定する』というアイディア自体は、すごろくにも含まれる、極めて有名なものですので、特にその決定方法などを明言しない限り(ルールに言及しない限り)法的な攻撃は不可能です。

一方、邪神の名前となると、事情が変わってきます。クトゥルフ神話の邪神たちが、いわゆる北欧神話やエジプト神話、ギリシャ神話などの神と変わらない、一般的な名前を持っていたなら、いくら使用しても誰も使用権を請求することはできません。

しかし、ニャルラトホテプとかアザトースといった特徴的な名前は、明らかにクトゥルフ神話、もといH.P.ラヴクラフトの著作から引用されていることがわかります。ましてや、作中でのその姿の描写や、性質の描写まで、ルールブック中の表現を参照していれば、引用なのは明らかです。

 

おそらく、リプレイ本を個人出版するにあたって、障壁になるのはこの点だけでしょう。そもそも、それらの邪神の名称はルールブックの翻訳者である角川エンターブレインさんやホビージャパンさんには属しておらず、H.P.ラヴクラフトの著作の翻訳権の問題になります。

 

そして、ラヴクラフトさんは、すでに死後70年以上が経過した人物です。

 

 

4.幾らかの点に注意すれば、リプレイ本の個人出版は可能

TPPの議論を追っている人なら、70年が何を意味するのか、わかるはずです。

 

現在のコピーライツは、死後50年で失効し、フリーユースに供されるのが通例となっています。しかし、TPPの交渉において、これを70年まで延長したいとアメリカ様が主張しているのです。

 

これは主に、ウォルト・ディズニーによるコンテンツの商標切れによる経済損失を危惧した策で、先日、これが既定路線として妥結に動き始めました。

 

しかし、ですよ?ラヴクラフトさんは1937年に死没しているんです。

なら、すでに70年以上が経過しているではありませんか!

 

つまり、TPPがどちらに運ぼうと、ラヴクラフトさんの著作のコピーライツが、原則としてすでに失効しているのは間違いない事実です(とはいえ、彼のノートを整理して出版した、オーガスト・ダーレスさんに権利が帰属するというなら、まだ死後44年しか経過していませんが…)。

 

つまり、邪神の名称などは、すでにフリーユースに供されるべき状態に置かれていると言っていいでしょう。

 

以上のことからわかるのは、次の点に注意しさえすれば、リプレイ本の出版が可能であるということです。

 

  • 特定のTRPGのリプレイ本であると明言しない
  • ルールの解説を行わない
  • ステータス決定方法は、キャラクター・クリーチャーともに解説しない
  • オリジナルのシナリオを利用する
  • 邪神の情報はラヴクラフトさんなど権利切れのものから引用する

 

会話劇として、ラヴクラフトさんの著作に魅入られた人たちが、集まってその世界観を利用した物語を創造しようとする、即興劇風の著作。

これが、個人出版可能なリプレイ本の姿ということになります。

 

こうした性質は、クトゥルフ神話TRPGにだけ、特徴的な性質とも言えます。

他のTRPG、たとえばソード・ワールドなら、世界観を借用することそれ自体が『転載・加工』に該当するからです。

 

というわけで、合間を縫ったスタイルで、自分なりのコンテンツを書いてみようかな、と考えております。

 

やってみて訴訟になったら、その訴訟の経過までブログで報告することにします(笑)