【クトゥルフ神話TRPGリプレイ】忘却の結末【part.05】
【前回のあらすじ】
ハルカがロールケーキを食べている間に、伏原は簡単な調査を済ませる。『鬼子』とは、いずれ『鬼』になると恐れられた忌み子のことを言うらしい。鬼の少女ハルカもまた、『鬼子』として生まれたのだろうか?
さらに、『とおとふたつのかみ』あるいは『十二様』が古代日本の動物信仰と関わっていることが見えて来る。伏原は機転を利かせ、ハルカの尻尾から、山羊神に焦点を絞るのだった。
ハルカは本当に神様なのか?
KP「ところで、ハルカちゃんと十二神社に行く約束をしましたよね?夢の中で。」
伏原「ああ、そうでしたね…。でも、今の段階で行っていいのかなぁ。もしそこに『おかあさん』がいるなら、絶対行っちゃいけないんですよね。」
KP「まあ、ハルカちゃんのためにも行ってあげてもいいんじゃないですか?最近信仰が薄れて、寂しがってましたし。」
伏原「でも、この子、本当に神様なんですかね?」
KP「というと?」
伏原「『おかあさん』の方は、多分間違いなく神様ですよ。もしもこの子がその『十二様』だったとして、それを産み落とした存在ってことになりますから。」
KP「なるほど。でも、神様だって、神様から産まれるものじゃないですか?」
伏原「いや、ただ祝福を受けたり、力を授かっただけの存在でも、神様扱いされることがあるんですよ。ほら、なんとか教とか、そうじゃないですか。」
KP「三位一体ね。たしかに『神の啓示を受けた』というのが、いつのまにか、『神そのものと同一である』というトンデモ論に昇華していますね。」
伏原「リプレイになると思って言わないでいるのに、なんで言うんですか!?書かないでくださいよ。」
KP「大丈夫、書きますから。」
伏原「おいおい…。まぁそれはいいとして、もし『十二様』が、三位一体ではなく、別々の存在だったとしたら、ここには『おかあさん』と『ハルカちゃん』という別の存在があるはず。」
KP「そして神の使いに選ばれたあなたは『預言者』とか『救世主』とか言われるわけですね。」
伏原「ということは、『十二様』という名称が、ハルカちゃんだけのものとは限らない可能性があるじゃないですか。古代には、『おかあさん』と『ハルカちゃん』は別々の名前で呼ばれていたのかも。」
KP「いやぁ、いつも思うんですが、妄想力が逞しいですよね。」
伏原「でも、そういう観点から調査したら、情報が出てくるってことは、すべてキーパーの掌の上ってことでしょう?」
KP「でも、そんな観点から、どうやって調べるんですか?」
伏原「それだよなぁ。まぁ、仮説ってことで、順当に動物信仰あたりから、図書館で本を探しますよ。」
まんじゅうと図書館
KP「ハルカちゃんはどうします?」
伏原「まんじゅう食べたいって言ってませんでしたっけ?」
KP「言ってましたね。図書館に移動する途中にありますよ。『タカザワ』という店ですね。」
伏原「あなたは観光大使か何かなんですか?」
KP「いえ、物語のリアリティを作るための、不必要なまでの粘着質な調査の結果です。黒糖のかりんとうまんじゅうの元祖名乗ってますよ。」
伏原「それ、本当ですか?」
KP「さあ?…とにかく、道中でまんじゅうを買って、図書館に移動ですね。図書館は大間々には小さいものしかないので、みどり市の中心地にまで赴いてください。車で移動する必要があります。」
伏原「貸し出しできますか?」
KP「市民じゃないと無理ですね。中で読むことしかできません。」
伏原「洋一に頼むか。」
KP「いいアイディアですね。洋一に電話して、車で迎えに行きますか。ハルカちゃんは?」
伏原「『何も言わないで、黙って私の言うことに頷いていれば大丈夫。』と言っておきます。そのくらいならできるでしょ、この子。」
KP「たぶん大丈夫でしょうね。ところで、いい加減ツノ隠しの帽子を買ってもらえませんかね。袴に帽子ってのも、レトロなやつをかぶせると雰囲気出るもんですよ。小さめの麦わらとかも意外と似合うもんです。まあ、花飾りをつけてあげるだけで隠すこともできるんですけどね。」
伏原「ああ、そうですね。それもそのうち。今は私のサングラスをツノのところにかけといてあげますよ。」
KP「幼女にサングラスとは、なかなか笑えそうな組み合わせですね。」
伏原「それで、先にまんじゅう屋に行きますよ。そこでまんじゅうを買って、洋一に電話して、まんじゅうを手土産にして彼を拾って、最後に図書館に向かいます。」
KP「その間に、再現したいシーンはありますか?」
伏原「あ、電話で聞きたいこともあるので、それを。あと、家の近くまで行った時のハルカちゃんの様子を見たいですね。」
KP「了解です。では、電話のシーンからいきましょう。」
忘却の中の神社
伏原「お、洋一か、昨日はちゃんと家に帰れたか?」
洋一「当然だろ!お前の方はどうなんだ?赤城山でも見に行ったのか?」
伏原「いや、最近ちょっと歴史の勉強にはまっててね。大間々ってのも随分面白い土地なんだな。」
洋一「は?お前、そんなことやるようになったのか、そいつは驚きだな。」
伏原「それで、ちょっとお願いがあるんだけど、図書館の本を1日だけ借りたいんだよ。俺、市民じゃないから借りられなくてさ。代わり、頼んでいいか?」
洋一「今すぐ?随分急だな。」
伏原「休暇も短いからね。いま家だろ?車でそっちに向かってるから、待っててくれれば大丈夫だよ。」
洋一「そうか、まあいいぞ。」
伏原「それから、ちょっと聞いときたいことがあるんだけど…」
洋一「え?まさか歴史関係じゃないよな?俺は全然知らねぇぞ?」
伏原「いや、この辺の人たちがお参りする神社って、どこなのかな、と思って。」
洋一「神社?うーん、そうだな…ああ、貴船神社がこの辺りじゃ有名だな。うちの車も、そこで祓ってもらったことがある。」
伏原「ああ、交通安全祈願のやつか。それってここから遠いのか?」
洋一「北西の方にあるね。歩いて行くにはずいぶん遠いな。車なら何てことはないが。」
伏原「でも、家の近くに八宮神社とか、十二神社とかあるだろ?」
洋一「え?八宮神社?十二神社?それ、どこだよ。」
伏原「八宮は、商店街から北西に抜けた先にあるみたいだぞ。十二神社は北の山の途中にあるらしい。」
洋一「…それって、あの古臭い神社か?あんなところ行くやついないだろう。山の方っていうのに及んでは、まったく思い当たる神社がねぇな。」
伏原「せっかく面白い土地だっていうのに、地元の人はそんなものかねぇ。」
洋一「うるせぇなぁ。こっちだって引っ越してきて短いんだよ。なんなら真紀にも聞いてやろうか?ま、どうせ知らないだろうけど、ここで生まれた生粋の大間々人だからな。これで知らなかったら、俺は免罪ってことで。」
伏原「ああ、頼むよ。着いたら結果を教えてくれ。」
洋一「おう、それじゃな。」
伏原「それじゃ、またあとで。」
伏原「…本格的に忘れられてるんですね。」
KP「そのようですね。」
伏原「では、家に着いたところをやりましょうか。」
誰ぞ鬼子を知る
KP「昨日の家に、車を寄せると、待っていたのか、洋一がすぐに出てきますね。」
伏原「まんじゅうを出しますよ。」
洋一「おいおいおい、お前、こんなかわいい女の子、どこで拉致してきたんだよ!」
伏原「人聞きの悪いことを言うなよ!撮影で親しくなった女の子で、北関東巡りに行くって言ったら、両親から一緒に連れて行くようお願いされたんだよ。いまご両親は赤城山に行ってるけど、この子はちょっと体が弱いから、麓のこっちで待機なんだと。」
洋一「おい、本当か?お嬢ちゃん?」
ハルカ「うん。」
伏原「な?だいたい、親と一緒でテレビの撮影帰りでもなきゃ、こんな袴着て歩いてる女の子なんてその辺にいないよ。」
洋一「いやぁ、しっかし本当かわいい子だなぁ。こりゃ美人になるわ。」
ハルカ「ありがと、おにいさん。」
伏原「それで、これ、お願いして悪いと思ってね。手土産に。」
洋一「お!『タカザワ』の揚げまんじゅうか!こりゃ喜ぶぞ。お前、一日二日でよくこんな店のことまで調べたな。」
伏原「だから最近調べ物にはまってるんだよ。とにかく、行くぞ。それ、奥さんに渡してきなよ。」
洋一「そうだな、ちょっと待ってろ。」
KP「そう断ってから、一度洋一は部屋に帰ります。すると、今度は真紀さんとその腕に抱かれた沙紀ちゃんも一緒に出てきますね。」
伏原「よし、この奥さんならそうしてくると思った。」
真紀「わざわざありがとうございます。」
伏原「沙紀ちゃんを見たハルカに対して、心理学で心情を読み取れますか?」
〈心理学〉ロール→??
KP「目を大きくさせて、ずいぶん驚いているようですね。」
伏原「ふむ…驚く、か。」
真紀「あら!本当にかわいい女の子ですね!沙紀もこんなかわいいお姉さんになれたらいいねぇ。」
KP「と、腕の中の沙紀ちゃんに話しかけていますね。」
伏原「奥さんがお綺麗だから、きっとなれますよ。それでは、ちょっと洋一さんをお借りしますね。申し訳ありません。」
KP「そう断って出発したあなたは、ルームミラー越しに、真紀さんと沙紀ちゃんが見送ってくれる姿を確認できますね。では、図書館に移動しましょうか。」