【クトゥルフ神話TRPGリプレイ】忘却の結末【part.02】
【前回のあらすじ】
人柄のよくできた幸せそうな渡辺洋一・真紀夫妻と、生まれたばかりの子供、沙希の元を訪れた伏原は、沙希に生まれついて乳歯が生えかけていたという話を耳にする。そのことが気になりながらも、伏原は旧友の渡辺洋一と再会の酒を酌み交わす。
ホテルまでの帰路、旧友の幸せそうな姿に感傷に浸っていた伏原の前に現れたのは、人気のない路地に不似合いな、袴を着た少女だった…。
謎の少女 ハルカ
伏原「彼女はこっちを見ているんですか?」
KP「ええ、驚いたような顔をしていますが、すぐに笑って、ぺこりとお辞儀をしますね。」
伏原「辺りを見渡してみますけど、他に誰かいますか?」
KP「いえ、あなたしかいませんね。」
伏原「恐る恐る、自分の顔を指差して、眉をしかめてみます。」
KP「笑顔のまま、元気に頷いてみせますね。」
伏原「お嬢ちゃん、一人なの?」
??「うん。おじちゃんお名前は?」
伏原「人に名前を訪ねるときは、まず自分からって、教わらなかったのかい?」
??「わたしハルカ!」
伏原「ハルカちゃんっていうのか。こんなところで何してるんだい?」
ハルカ「…(少し悩んでから)わかんない!おじちゃんだ〜れ?」
伏原「わたしはおじちゃんじゃないよ。名前は伏原だけど、お兄ちゃんと呼びなさい。」
ハルカ「伏原さん。伏原さん。伏原さん。よし。よろしくね、おにーちゃん!」
KP「ハルカはそう言って満面の笑みを浮かべると、あなたの手を取って、路地から商店街通りに向かって走っていきます。」
伏原「ついて行ってみます。」
KP「角までたどり着いて、辺りを見渡すと、ハルカはあなたを見て、こう言って跳ねますね。」
ハルカ「大間々だ!大間々久しぶりだー!」
KP「そう言うと、喜びを共有したいのか、あなたの手を取ってブンブン振りますね。」
伏原「…キーパー……。」
KP「ん?どうしました?」
伏原「この子のAPPはいくつですか?」
KP「んー、それをよく見ようとしたところで、〈目星〉してもらっていいですか?」
〈目星〉ロール→成功
KP「では、顔や髪の毛などの具合を見る限り、人間界でいう最高レベルの美少女ですね。APP18相当です。」
伏原(無言のガッツポーズ)
KP「しかし、それと同時に、あなたはあることに気がつきます。彼女の頭、耳の真上よりもやや前方に、髪の毛の間をぬうように、小さな白い突起がありますね。」
伏原「…よくできた飾りですね。」
KP「では、〈アイディア〉振ってください。」
〈アイディア〉ロール→成功
KP「あなたはそれを見て、信じがたい事実に気がついてしまいます。その白い突起物は、他ならぬ骨が露出した、ツノと呼ぶ以外にないものです。このことに気づいた伏原さんは、ここでSANチェックです。」
SANチェック→成功 減少なし
伏原「鬼、か。でも、害がなさそうですね。『ハルカちゃん、夕飯は食べたの?』」
ハルカ「食べてないよ!…食べさせてくれるの!?」
伏原「僕は大丈夫だけど、他の男の人について行ったらダメだからね!ちゃんと気をつけないと。」
ハルカ「うん!」
伏原「男はね、『けだもの』なんだから、気をつけないと。」
ハルカ「けだもの?…けだもの、けだもの…あ!けだもの!」
KP「何かを思いついたようにそう言うと、ハルカちゃんはツノのところに左右の指を立ててツノを作って見せ、笑いながら『がおーっ!』と言ってはしゃぎますね。」
ハルカ「けだもの!がおーっ!」
伏原「…キーパー。」
KP「今度はなんですか?」
伏原「プレイヤーの心が持ちません。」
KP「は?」
伏原「なんですか、この可愛い生き物は!TRPGのプレイとか忘れて、この子を愛でたいんですけど!」
KP「あれ?『ビジュアルイメージもない語りの中だけの女の子に熱をあげることなんてない(キリッ』って言ってたのはどちら様でしたっけ?」
伏原「自分でも信じられないくらい悶えてるんですけど!やばい!リアルに帰ってこれなくなる!何かに目覚めてしまう!」
KP「よかったですね、今回のシナリオのパートナーは、この鬼の少女ハルカです。思う存分ハートフルシナリオを楽しんでください。」
伏原「やった!やったよ!人間不信から解放されるよ!」
気を取り直して…
KP「それで、ハルカちゃんをご飯に連れて行ってくれるんですか?」
伏原「はい、そうしてあげます。この辺ってどんな店があるんですか?」
KP「また居酒屋のあったあたりまで戻れば、小さな店ですけど、わりと揃ってますよ。」
伏原「なら、中華料理屋にいきます。」
KP「袴の少女に中華ですか(笑)まあいいでしょう。ええと、『点心』って店がありますね。」
伏原「じゃあそこで。店員に中国人はいますか?」
KP「まあいたことにしてみましょうか。どうしたんです?」
伏原「せっかくだから、中国語を話そうかと思って。」
KP「ああ、確かに、カンフー修行しに滞在してましたしね。でもなぜか広東語じゃなくて北京語なんですよね。」
伏原「まあ広東語とか中国語以上に使うことありませんし。」
KP「あ、リプレイでの表記は台湾の繁体字になりますけど、いいですか?」
伏原「いいですよ。ええと、先生,請給我菜單(店員さん、メニューください)。」
店員「你點什麼?(ご注文は?)」
ハルカ「青菜!還有,小籠包!(野菜炒め!あと、小籠包!)」
伏原「!?」
ハルカ「還有,那個。。。我要吃太多東西!不會確定喔!(それから、えっと…食べたいのがたくさんあって決めらんないよ!)」
ハルカ「你要吃什麼,大哥?(お兄ちゃんは何食べたいの?)」
伏原「え…これは…どういう?」
KP「あ、彼女中国語話せるんで。」
伏原「はぁっ!?中国語の話し方まで可愛かったのは評価高いけど!けど!なんで話せるんですか!?」
KP「さあ?なんででしょうね。あなたの酔狂のおかげで、全く伝わることが予定されていなかった情報を得られたので、得したと思っていただいていいですよ。」
伏原「ハルカちゃん、中国語話せるの?」
ハルカ「當然我會!(あったりまえでしょ!)でも、ここは大間々だから、日本語だよね?おにーちゃんはなんで話せるの?」
伏原「昔住んでたからね。ハルカちゃんはなんで?」
ハルカ「何回も行ったことがあるの。あと、I can speak English also. Can you speak, brother?(英語も話せるんだけど、お兄ちゃんは話せる?)」
伏原「なんだこの幼女は!」
KP「設定上は、さらに韓国語とヒンドゥー語もいけます。私がスペック負けしているので、割愛しますが。」
伏原「わけがわかんないぞ!…つまり、只者じゃないな。たぶん、見た目の年齢と実年齢が一致してない、ロリババアに違いない!」
伏原「ハルカちゃんって、何歳なの?」
ハルカ「…?わかんない。」
伏原「あ、なんか、この『わかんない』って、何回も聞くことになりそうな気がする。」
KP「さて、この子、すげー食います。そりゃもう、すごい勢いで食います。」
伏原「だてに鬼じゃないですね。」
KP「多めに頼んでおいたはずの料理も、ほとんどこの子が一人で平らげてしまいますね。」
ハルカ「美味しかった!おにーちゃんありがと!」
伏原「それで、ハルカちゃんは何の為に大間々に来たの?」
ハルカ「…ん?…えっとね、えっとね…ロールケーキ。」
伏原「え?」
ハルカ「ロールケーキ…が、食べたいです。」
伏原「はぁ?」
ハルカ「ロールケーキ食べよ!わたし一本全部食べるの!連れてって!」
伏原「連れてってと言われても…どこに?」
ハルカ「『チョージュケン』!生ロールケーキがあるの!明日一緒にいこ?」
伏原「なんだこの自由な子は…。クトゥルフが始まったと思ったら、ロールケーキを食べさせに行くことになったでござる…。」
KP「いやぁ、伏原さんもいい『おにいちゃん』っぷりじゃないですか。」
伏原「つまり、この子に出会っただけでは、導入は終わりじゃないんだね?」
KP「ええ、そういうことです。とりあえず、彼女に今日の宿を提供してあげてください。」
伏原「え!?こんな美少女を急に部屋に連れ帰れって言うんですか!?」
KP「あら、嫌ですか?」
伏原「大歓迎です。」