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【うろ覚えSWノベル】山賊退治ミッション:5(商人)

翌朝。部屋から出たキリトの耳に、話し込むタツの声が聞こえた。相手は宿屋の主人だろうか。果たして、ロビーに出てみるとその通りだった。

「どうしたんだ?」

あくびをしながら面倒そうに尋ねると、タツが笑顔で応じる。

「ああ、旦那、おはようございます。こちらの主人がね、あっしらの村に親しい友人がいるとかで、ちょっと盛り上がってしまいまして。」

キリトはその言葉を適当に聞き流しながら、見当たった椅子に座ってもう一つ伸びをする。

「いやぁ、タツさん。こんな商売をしていれば、知り合いは増えるものですよ。ああ、そうだ、キビーの村といえば、宿の前でやっている朝市に、トーチから来た商人がいましたよ。干し肉を買わないかとうるさいのですが、彼はトーチの事件を知っているんですかねぇ。まぁそれと商売は別の話です。皆さんも捕まらないように気をつけてくださいね。」

「ほう、それはいいことを聞きました。」

そう言いながら現れたのは、おっさん冒険者、あもちんぽだった。

「トーチについて何か情報が得られるかもしれません。もっとも、壊滅的被害を受けたという以上の情報があるか怪しいものですけど。」

ふん、バカバカしい。キリトは退屈そうに両手を頭の後ろで組んで見せる。情報が何の役に立つって言うんだ。結局は剣と金がものを言うに決まっている。そこまで考えて、キリトは再び悪巧みを始める。商人なら金もたんまり持っていることだろう。

 

残る三人もすぐに現れた。キリト、あもちんぽ、ラビット、ボブソン。それにタツとカイトの六名の旅路が、今始まった。もっとも、その旅路は近隣の村までという、ごく短いものにすぎないのだが。

 

そして旅路の一番初めに出会ったのがこの商人である。あえてメンバーから少し離れた所に立っていたキリトは、ぬいぐるみのボブソンが商人に捕まっているのを見て、密かに笑っていた。干し肉を買えとうるさいことだけは、この距離でもよく分かる。キリトは内心で「干し肉野郎」と名付けたその商人に対して、一芝居打ってやることにした。

 

「おい、貴様、誰の許可を得てここで商売をしているんだ!」

影から出てきたキリトは、うるさい商人に凄んでみせる。商人はキリトの登場にギョッとしたようだが、すぐに平静を取り戻して応じた。

「あんたこそ、イェール商会の者じゃないだろう?誰の許可を得てみかじめ料なんて要求してるんだい?」

イェール商会?なんだそれは?世間知らずのキリトが、ルテティアの商会制度など知る由もなかった。とにかくわかったのは、ここで脅しても、あまり効果がない、ということだ。

「おい、なんとか言えよ!イェールの衛兵を呼んでもらわなきゃな。おい、そこのあんた、頼んでいいか?」

「干し肉野郎」は付近にいた同業者に声をかける。これは失敗だ。キリトはそう悟ると、引き際鮮やかに逃げ去っていった。またしても、ボブソンがため息をついて頭を抱える。先に商人と話していたあもちんぽとラビットに及んでは、完全に無視したまま、商人との会話が再開された。

「いやぁ、ああいう手合いは珍しいですな。あそこまで無知に脅して見せるなんて、バカのやることですよ。それはそれとして、冒険者さん御一行、どうです?干し肉。人数分まとめて買ってくれないかねぇ。ルテティアを出るなら持っておいて損はないですよ。」

ルテティアの商人は皆、肝が座っている。そうでもなければ、このルテティアで商売を続けることは難しい。この地域の商人がしのぎを削る、激戦区なのだから。

「買ってやらんこともないが、ちと高いな。」

その言葉に商人はピクリと反応する。

「まぁそう言わず。ちょいと仕入れ過ぎちまってサァ。ああ、そうだ、あんたたち、今から山賊退治だろ?キビー出身の一般人に連れられてるんだ、間違いねぇ。なんならトーチの村の途中にいる隊商に紹介状を書いてやるよ。トーチに物資を届けたいんだが、この山賊騒ぎで、慎重に行かざるを得ないことを嘆いてたんだ。奴も商人だから、報酬は弾んでくれるだろうさ。どうだ?これなら得だろう?」

ラビットとボブソンが顔を見合わせる。しばしの沈黙が流れ、ボブソンが口を開いた。

「よし、買った。」

 

ラビットとボブソンの間で行われた、どちらが金を出すのかという視線の戦いに気付いたものはなかった。

 

 

つづく