TRPGシナリオとレベルデザイン、そしてシナリオ記述【クトゥルフ神話TRPG】
静かにしていた間に学んだことをぽつぽつ書く記事第3弾。
一般に「ゲームシナリオ」と言うとき、それは「そのゲームでプレイヤーが経験することになる物語」を意味します。しかしTRPGに限定すれば、シナリオは全く異なる概念であることに注意が必要です。
クトゥルフ神話TRPGにおけるシナリオには、二つの要素が追加されています。それぞれ通常のゲーム制作上の用語で「ゲームメカニクス」「レベルデザイン」と呼ばれる要素です。
レベルデザインとは、プレイヤーのゲーム習熟度に応じて適度な難易度でゲームを楽しめるようにする難易度設計を指す用語です*1。一方ゲームメカニクスとは、ゲームの中でどのようなリソースの経済を作り出すかというゲームの力学系を意味する用語です。
今回はクトゥルフ神話TRPGシナリオにゲームメカニクスとレベルデザインが含まれている理由について考察した後、それがもたらす困難とその解決法を整理します。
- ゲームの構成要素
- ゲームルール
- ゲームメカニクス
- レベルデザイン
- TRPGシナリオとゲーム
- ソード・ワールド2.5
- ダブルクロス3rd
- クトゥルフ神話TRPG
- シナリオ記述とレベルデザイン
- 記法の分類とそれぞれの効果
- プレイヤーアクション記法(PLA記法)
- 環境記法
- ゲームメカニクスの含み込み
- レベルデザインの困難
- 記法の分類とそれぞれの効果
- 解決方法は既知
- 悪霊の家の分析
- 死者のストンプの分析
- 解決方法
- まとめ:シナリオ記述によるレベルデザイン
*1:これ間違いでした。ゲーム内空間のデザインを指す用語です。ここでは誤用ではありますが、誤用の意味で用いているという前提で解釈していただけたら幸いです
罪深いシナリオ“クリア”の話【クトゥルフ神話TRPG】
シナリオを書いていたり、キーパーをやっていると、シナリオにグッドエンドとかバッドエンドとか、クリアとかいう概念が出てくることがしばしばあります。特にノベル型シナリオやクローズドルームズ型シナリオにはこうした概念が含まれていて、半ば当然の存在として受容されています。
しかし、シナリオ“クリア”とかグッドエンドといった考え方を前提にすると、プレイヤーに思わぬ不愉快を与えてしまい兼ねません。今日はシナリオ“クリア”を前提にしてしまいがちな、ノベル型・クローズドルームズ型シナリオについて、どういう風に考えるとよいのかを整理してみます。
- シナリオ“クリア”という不思議
- ルールブックに見るシナリオ
- サンプルシナリオの結末
- 小結:ルールブックにも目標達成の有無はある
- シナリオ目標が生み出す“クリア”
- クローズドルームズ型シナリオの目標
- 目標達成と失敗
- オチとして死亡や発狂を足す
- ノベル型シナリオの目標
- 目標達成と失敗
- 〈物語的幸福〉と情報量
- クローズドルームズ型シナリオの目標
- 一回性のゲームで“クリア”はツラい
- “クリア”が導く“良いプレイヤー/悪いプレイヤー”
- “クリア”は本質的に言い訳ではないだろうか
- シナリオから“クリア”を取り払う
- ルールブックに立ち返る
- 「死者のストンプ」の例
- あえて改悪すると見えてくる
- クローズドルームズ型の目標を変える
- シナリオ目標非達成=脱出失敗=死亡はやりすぎ
- シナリオ目標を脱出と切り離す
- ルールブックに立ち返る
- まとめ:非達成が許容できる作り
クトゥルフ神話TRPG的な意味で「物語」ってなんだろうか?
こういう記事は久しぶりに書きますが、書かなかった時期に得たことを飲み込めてきたのでぽつぽつと。
さて、このブログではストーリーテリングの技法をシナリオに活用することを考えてきました。というのは、TRPGで物語を体験する可能性を追求するという目標があったからです。しかしこのとき、「物語」の定義が曖昧だったことを見過ごしてきました。
ナラトロジー(物語論)では、ある「筋」に従って要約できる統一性のある表現というような形で「物語」を定義します。実際このブログで主張してきた「探索空間理論」でもこの定義は継承されていました。探索空間が「物語的に見て意味のある探索者の行動を促す条件」と定義されたのは、結果的に「ひとつの筋に従って意味のある構造」としてセッションを振り返ることができることを重視した結果でした。
しかし、こうしたナラトロジーによる「物語」の定義を前提とすることは、クトゥルフ神話TRPGにおける「物語」の定義との間に反故を生じかねません。もちろん、クトゥルフ神話TRPGが「物語」の定義をしている訳ではありませんが、ゲームシステム上前提とされる「物語」のあり方が存在している可能性は十分にあります。
というわけで、本日はクトゥルフ神話TRPG的「物語」の意味について考えてみます。
- クトゥルフ神話的物語≠クトゥルフ神話TRPG的物語
- クトゥルフ神話的物語はあくまで小説
- クトゥルフ神話TRPGは課題克服ゲームと認識できる
- ゲームとして判定を楽しむ
- 「抵抗」がプレイヤーを存在させる
- 補論:「抵抗」しない物語
- 非存在状態はストレス
- 「抵抗」が作る物語
- プレイヤーには「抵抗」させよ
- “ドタバタ”の克服
- 補足:戦闘という連続判定
- クトゥルフ神話TRPGの前提する「物語」
- “ドタバタ”の理由
- 意外な失敗
- 戦闘は必須なの?
- まとめ:物語の盛り上がりに“ドタバタ”を重ねる
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クトゥルフ神話TRPGシナリオ「廃鉱山の村で」の販売を開始しました
ねずぷろから離脱して自分でチームを抱えて作業するようになって8ヶ月がたちましたが、ようやくシナリオの自主販売にたどり着きました。BOOTHに自らのショップを構え、昨日同人販売がスタートしました。
本日は新たに発売されたシナリオの内容について紹介しつつ、編集後記的にいろいろと裏話をしていきます。
- シナリオ1本を収録
- 廃鉱山の村が舞台
- オープンかつ誘導線を組み込む
- 裏話1:珍しく色がないシナリオ
- シナリオの味付けは「プレイしたい」を生み出す
- シナリオの脱色をあえて試みる
- 裏話2:味付けしたらどうなるの?
- メンバー内で出た味付けの話題
- シナリオ作者なんて見えない方がいい
- まとめ:皆さんなりの楽しみ方をしてください
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