TRPGをやりたい!

電源・非電源ゲーム全般の紹介・考察ブログ

早瀬コウによるクトゥルフ神話TRPGシナリオのおさらい(僕のシナリオに詳しい人向け)

 クトゥルフ神話TRPGのシナリオ公開を始めてからだいたい2年ほどが経ちましたが、僕の公開している全シナリオのマップを作ってみました。現在公開されているのは全23シナリオです。以下の図をご覧ください。

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 概ね上から下に向けて執筆時系列が噛み合うように書かれています。いくつかのシナリオは長期間をかけて書かれているので、多少前後しているものがあります。その場合には技術的な継承関係を優先して配置してみました。

 先日ツイートしたところ、「ナンとカレーなダンスを!」と他のシナリオが僕という同一個人によって書かれたものということが信じられなかったらしく、数名から笑いと驚きの反応をいただきました。この機会に再度宣言しておきますが、これくらいの振れ幅があるのが僕です。どうぞよろしくお願いします。

 

 さて、今日の記事の目的は何かというと、まぁもちろんシナリオの宣伝というのもあるのですが、同時にそれぞれのシナリオの何を反省して次に進んでいるのかという話をしようと思います。

 

  • 黎明期からポップシナリオへの移行
    • 情報を集めて量で殴るシナリオ
    • プレイアビリティ概念の発見
    • ポップだけを集めたTRPGシナリオ館
  • 黎明期が生み出した3つのジャンル
    • 「糸に囚われて」がもたらしたもの
    • 「アンドロイドは名状しがたき夢を見るか?」がもたらしたもの
  • サークルメンバーからの影響の中で
    • 白ねずみさん作「時計屋敷の秘密」に導かれて:「橙色燈火」の誕生
    • 「死絡み」:きつねさんとのペアライティング
  • 技術的挑戦を試みる
    • 分化した技術の再統合と限界への挑戦
    • シナリオの「追体験」から「体験」へ
    • 不条理とぶん投げの向こう側にあるPLの楽園
  • 近作の課題意識と続く挑戦
    • KP主導の物語にPLを引き込む技術
    • 不条理の向こう側にある「現代神話」
    • 自由な恐怖体験のデザインを目指す
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【ソード・ワールド2.0リプレイ】いにしえの契約【英雄志望と二つの剣2nd season 3-2】

<前回 第1シーズン2nd−1カシウス過去編2nd−22nd-3

 

前回のあらすじ

騎士団から依頼があるはずだったが、アークはすっかりそれを忘れてしまった。レイラは独自研究によって生み出したうさぎ型ゴーレムのニタマゴくんに浮かれっぱなしだ。そんなドタバタの中コーラルがカシウスの朝食を盗み食いする。いつもの滅茶苦茶なメンバーたちの中で、ため息をつきながら哀愁漂う背中で朝市に向かうカシウス。果たしてカシウスの不幸体質は治るのだろうか。

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【ソード・ワールド2.0リプレイ】いにしえの契約【英雄志望と二つの剣2nd season 3-1】

<前回 第1シーズン2nd−1カシウス過去編2nd−2|2nd-3|←イマココ

 

前回のあらすじ

アイラット領主コリンズの暗殺を試みた暗殺者を捕らえることに成功した。しかし何やら謀略が張り巡らされているようで、冒険者たちはひどく困惑させられる。ひとまず暗殺者の身柄を騎士団に引き渡し、冒険者たちは再びしばしの休養に入った。

 

GM:年が明けましたね*1、皆さん今年も宜しくお願い申し上げます。

カシウス:あけましておめでとう!

レイラ:リプレイになる頃には半年は遅れてますよ、その挨拶……

アーク:みんな、あけましておめでとう!! 今度からはリプレイの時期を先読みしてネタを挟むね!

GM:それは無理でしょう(苦笑

*1:このセッションは2017年1月に収録されました

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シナリオの良し悪しについて考えてみる【クトゥルフ神話TRPG】

 先日Twitterで話題になっていたので、「シナリオを評価すること」について、ちょっと整理して考えてみましょう。

 

 とはいえこの記事については幾つかの前提条件が入ります。まずはクトゥルフ神話TRPGのシナリオに話を限定します。それから、決して結論を断定しません。あくまで「考えてみる」というのが主題です。

 というのは、今日の記事の趣旨は、そもそも忘れてはならない次のことを指摘することだからです。第一の指摘は、ものの正当な評価は感想とは異なるということ。第二の指摘は、シナリオには幾つかの立場の異なる視点があるということ。第三の指摘は、それぞれに異なる生産目標があるということ。

 以上の各点について、シナリオの良し悪しについて論じるとはいかなることなのか、少しだけ考えを深めてみましょう。

 

  • シナリオの「感想」と「評価」
    • シナリオの「感想」
    • シナリオの「評価」
      • 根拠を用意する
      • 根拠の根拠
  • シナリオをめぐる3つの視点
    • シナリオの仕組みを論じる人:ライター
    • シナリオの純粋な利用者:キーパー
    • シナリオの遊び手:プレイヤー
  • 解釈の多様性を生み出す目的
    • シナリオの目的により評価軸は変わる
    • 注記:目的を誤解した評価
  • 結論:評価は遠い、感想は近い
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【ソード・ワールド2.0リプレイ】動き始めた歯車【英雄志望と二つの剣2nd season 2-13】

<前回 第1シーズン2nd−1カシウス過去編2nd−2

 

前回のあらすじ

暗殺者を捕らえたものの、騎士団に依頼されたの一点張り。発見された証拠の手紙も怪しいものだった。身柄をコリンズか騎士団に引き渡そうとしたレイラたちに、クキバミは警戒を呼びかける。どちらに引き渡しても政争を激しくしてしまうというのだ。困った冒険者たちは暗殺者の身柄の扱いをレイチェルに相談してみることにする。しかしそのレイチェルもどこか信用できない……。

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【ソード・ワールド2.0リプレイ】動き始めた歯車【英雄志望と二つの剣2nd season 2-12】

<前回 第1シーズン2nd−1カシウス過去編2nd−2

 

前回のあらすじ

“わかりやすい足跡”を追いかけると、そこで待ち構えていたのは魔動機術を使いこなす謎の男が息を潜めて待ち構えていた。数的不利にも関わらず、暗殺者は怯むことなく攻撃を仕掛けてくる。すかさずクキバミが放ったショックボムは、相手の身動きを取りづらくし、形勢は圧倒的なものになりつつあった。

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そういえば自家とふを設置しましたよ

 先日自家とふを設置しました。なんだか思い立ったらすぐ行動ということで、以前からずっと考えてはいたんですが、一度にえいっとやってしまいました。

 

 自家とふの設置はなんだか大変だという印象をお持ちの方もいるかもしれませんが(現にぼくがそうだった)、やってみるとそうでもありませんでした(維持管理についてはどうなのか、まだわかりませんが)。

 

 というわけで、本日は思ったより簡単だったどどんとふ設置について、僕個人の場合のケーススタディをご報告いたします。一般に広く通じる話の部分と僕だけの話の部分があると思いますので、その辺りについてはそれぞれご判断ください。(なんといっても、僕自身はサーバーの扱い方なんてものには全くもって知識がないど素人なので、トラブル対応とかはできませんので……)

 

  • そもそも自家とふってなに? なんで必要なの?
  • サーバーの契約
  • どどんとふのデータをダウンロード
  • FTPソフトの利用
  • そして起動実験
  • 自家とふ設置に関するまとめ
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【ソード・ワールド2.0リプレイ】動き始めた歯車【英雄志望と二つの剣2nd season 2-11】

<前回 第1シーズン2nd−1カシウス過去編2nd−2

 

前回のあらすじ

フロンタ隊長のことを信用している冒険者たちは、黒幕候補筆頭である領主コリンズ侯爵に話を聞いてみるが、まったくもって尻尾を出さない。つまりコリンズの仕業ではないということなのだろうか。その一方で結託していると思われていた帝国商会と皇帝権力が対立していることもわかってきた。帝国商会の有力者であるブラックバーン商会がこの権力闘争の鍵を握っているようだ。しかしその一人娘であるレイチェルはカシウスといちゃいちゃタイムを繰り広げている。いったいこの襲撃の黒幕は誰なのだろうか?

 

レイラ:じゃあ足跡を追いましょうか

カシウス:俺についてこい!

アーク:きゃーカシウスかっこいい!

カシウス:きりっ

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どうしてオリジナルシナリオを書きたいのかに端を発したぼやき

 シナリオの書き方関係の記事を以前は定期的に上げていましたが、半年くらい前からいろいろなところに小さな躓きを感じていて、そういうことを話さずにきました。「結局自分の作ったシナリオで語るしかないのよね」という考えになって、作り方を紹介してもなんだか意味のあることなのかよくわからなくなっていたからです。

 

 こうした心の躓きの背景には、実は「どうしてオリジナルシナリオを書きたいと多くの人が思うのか」を理解できていないという問題があったのではないかと思います。

 

  • 僕自身の話と感じ続けていた「躓き」
  • 書けない人にハウツーを届けることの意味
  • 初心にかえったシナリオ作成体験
  • なんだか忘れていた基本的なこと

 

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【ソード・ワールド2.0リプレイ】動き始めた歯車【英雄志望と二つの剣2nd season 2-10】

<前回 第1シーズン2nd−1カシウス過去編2nd−2

 

前回のあらすじ

アイラットの領主コリンズ侯爵の暗殺を試みたのは、どうやら蛮族ではないようだ。そのことに気づいた冒険者たちは、GMがいったい何を企んでいるのかと訝り始める。現時点で調査できる限界として、そのコリンズ侯爵の元へ話を聞きに向かったレイラとクキバミ。一方アークたち3人はレイチェルの元で2人を待つことにした。

 

GM:では、レイチェルを通じて面会を申し込むと、今度は快諾されたのかすぐに部屋に招かれます。お留守番組はここでレイチェルと雑談していてください

アーク:はーい

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やさしい狂気のはじめかたVol.3 掲載シナリオ紹介【クトゥルフ神話TRPGシナリオ集】

 皆様長らくお待たせいたしました。先日ようやく「やさしい狂気のはじめ方Vol.3」の掲載シナリオが全て整いましたので、ご報告させていただきます。

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 発売自体は昨年の11月に行われたように記憶しておりますが、それから長きにわたってシナリオ一つが未掲載状態のままというあるまじき失態をおかしてしまいましたこと、まずはこの場を借りて心よりお詫び申し上げます。

 

 さて、本日は無事に3シナリオが整った「やさしい狂気のはじめ方Vol.3」の掲載シナリオを紹介していこうと思います。

 

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  • 狼をめぐる冒険
  • 秋の足音
  • ミツバチ
  • まとめ
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【ソード・ワールド2.0リプレイ】動き始めた歯車【英雄志望と二つの剣2nd season 2-9】

<前回 第1シーズン2nd−1カシウス過去編2nd−2

 

前回のあらすじ

フロンタ隊長は帝都側との交渉でとにかく不利に立たされているようだ。冒険者たちへの報酬も確保できないほど権限が奪われているらしい。そのこととコリンズ侯爵との対立が関係しているのだろうか。そんな疑問を抱く暇もなく、レイチェル・ブラックバーンが資金提供を提案する。果たしてコリンズ侯爵の暗殺を試みた暗殺者の正体とは……

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